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ぽかぽか新聞

ぽかぽか新聞

生後1日~30日



【生後1日 (25週5日) 体重量れず】
 
帝王切開で切ったお腹のキズがほんの少しの振動で痛む。

体の向きを変える事さえ出来ない。

でも今日自分の力で元太に会いに行くためにベッドから起き上がらなければ。

車椅子で夫と一緒にNICUへ向かい、初めて産まれてきた元太に会った。

元太は夫の手のひらに乗るような小さい体に沢山のチューブをつけられて保育器に眠っていた。

人工呼吸器、おへそ、手首、足首からの点滴。

体は赤黒く、手足の肉はなくもちろんガリガリ。しわくちゃの皮が骨についているといった感じだった。

でもとても可愛く愛しく思えたのはきっと親だからだろう。

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初めまして、元太君。お腹の中で良く頑張ったね。

お父さんとお母さんに早く会いたくて10ヶ月待てなかったんだね。

元太もびっくりする程小さく産まれてきたけど、これからゆっくり一緒に歩いていこう。

生まれて来てくれてありがとう。

あかちゃん


ビニールの手袋をし少しだけ触る事を許された。触ったら壊れてしまいそうな体を指でなでた。

「お母さん、母乳を出してください。母乳がこの子にとっての一番の栄養です。

25週で生まれた赤ちゃんのお母さんからは25週の子に必要な沢山の栄養のある母乳が出るんです。

今まで診て来た25週で生まれた子の中ではしっかりしている方です。

25週でここまで育っていた事がラッキーだった。今までのお母さんの栄養のお陰です。」

と主治医の先生からの言葉。


聴診器


母乳は哺乳瓶に絞って、母乳専用保存袋に入れて冷凍し、小さいクーラーボックスに保冷剤を詰めてNICUへ運ぶ。

おっぱいがカンカンに張って、横になることも出来ないくらい痛い。

両方の胸にアイスノンを入れると少し楽になった。

3時間おきの搾乳には赤ちゃん達に母乳を飲ませるお母さん達と一緒になる。

私はその時間が楽しみだった。みんなで話す事が夜中の眠さを解消してくれた。

おっぱいを吸っている赤ちゃんの口元がかわいくてかわいくて・・・

コップ

これからきっと沢山の山が待っている。

山を一つ一つ乗り越えて行こうね。

まずは2週間が山だとの事。どうか生き抜いて。

げん誕生


【生後2日目 母乳0.1cc×8回  体重560グラム】

母乳を飲み始める事が出来た。

ほんの、ほんの少しだけど確実に私の母乳が元太の体に入っている事がとても嬉しい。

でも体重が560グラムまで減っていた。超未熟児は出生後、体重が大幅に下がるらしい。

560グラム・・・元太と面会を終えて戻ったベットで誰とも話す気にもなれず、カーテンを閉めた。

560グラム・・・・

母体を守るためお腹の中で育っている赤ちゃんを外に出してしまった。

私を助けるために元太をこんなに早く出してしまった。

ごめんね。ごめんね。お腹の中で育ててあげられなくてごめんね。

涙がとめどもなく流れる。

母親の私がしっかりしなきゃと思っても涙が出てしまう。

神様。どうか元太を助けてください。祈る事しか出来なかった。


あかちゃん



【生後3日目 母乳0.2cc×8回 】 

毎日の面会は、一日30分だけ予約制で許される。

白衣を着て手を洗って消毒をし髪を結んでNICUに入る。

母乳の量が増えた。今日は片目を開けた!まだはっきりとは開かない目でしっかりこっちを見た。

目が合った。お母さんだよ。見える?


【生後4日目 母乳1CC×8回】

ほんの少しづつミルクの量が増えている。うん、順調順調。

気になるのは体重だが、体重を量る事が小さい赤ちゃんには負担になるため
落ち着くまでは体重を量るのを中断するとの事。

元太は今一生懸命生きようと頑張っている。

この世に生をうけ、必死に生きようと頑張っている。今私にできる事は強くなって一緒に頑張る事だ。

保育器の中にいる我が子を前に私も強くなろうと誓った。


【生後6日目 断乳】ウンチがでない

主治医の先生に呼び出された。

うんちが出ないとの事。

この子は力んで出そうとしているけど、筋肉がなく自分で出す事ができない。

浣腸をしても上から薬を入れてもでない。

もしこのまま2.3日出なければ、お腹を切ってウンチを出してあげるのが一番良い方法だと。

手術をする可能性があるとの説明があった。

こんな小さな体にメスを入れる?嫌だ。絶対嫌だ。もうこれ以上体を傷つけないで。

うんちが出るまで母乳はストップ・・絞った母乳は捨ててくださいと看護師さんに言われた。

「冷凍しておいたらだめですか?」の問いに、新鮮な母乳を飲ませたいから、また再開の時は声をかけるので捨ててくださいと。

母乳を捨てる・・・辛い一言だった。

どうしてどうして?どうして?手術なんて嫌だ。

面会に来てくれた妹の誘いで外の空気を吸いに病院の外に出た。

泣く事しかできなかった。

病院から電話で夫に手術の可能性がある旨を話した。

「今は元太にとって何が一番良いかを考えよう。もし手術をして元太が楽になるなら、手術をしよう。

手術をして助ける事ができればそれが一番良い」と夫は話してくれた。

強いね。そうだよね。

ただ目の前の事だけを考えるんじゃなくて、最終的に元太にとってどうするのが良いかを考えればいいんだね。

でもできれば手術してほしくない。ウンチ、出て。


【生後9日 母乳再開 2CC×8回 643グラム】

うんちがでるようにと祈りながらの3日間が過ぎた。

ガリガリの体にお腹だけがパンパンに腫れていた。

浣腸のお陰でほんの少しうんちが出たので母乳を再開。

560グラムまで減った体重がほんの少し戻った。目標、出生体重806グラムに戻る事。

退院して実家に戻った私はお腹のキズの痛みにも慣れていた。

安静生活が長かった為、すっかり体力が落ちてしまっていて、少し動いただけでもしんどい。

体力には自信があったのに、こんなに動けなくなってしまうんだね。

これから毎日病院まで片道1時間の道のり、きっと元太の事で頭がいっぱいなんだろうな。毎日会いに行くからね。

ずっと一緒にいられないけど、心はずっと一緒だよ。


【生後10日 母乳再開 4CC×8回 643グラム】

1月27日、今日夫と出生届けを出しに行った。

「子」の欄に元太の名前。とても嬉しい瞬間だった。

健康保険証にも「子・元太」親という責任を実感した。私達が元太を守るんだ。

私達をお父さん、お母さんにしてくれてありがとう。


【生後11日 母乳6CC×8 659グラム】

少しづつ自分の力でうんちが出せるようになった。

良かった。本当に良かった。これで夜はゆっくり眠れるね。

毎日うんちが頭をぐるぐる回っていたもの。今日は両目を開けてしっかり私を見つめてくれた。

僕、頑張ったよって言っているんだね。

小さな手を口にあてて気持ち良さそうにあくびをしながら眠っていた。


【生後12日 母乳6CC×8 659グラム】感染症
 
昼間家の電話がなった。主治医の先生からだった。

声を聞いたとたん心臓がばくばく早くなった。

肺に菌が入ってしまった。感染症を起こしたとの事。

抵抗力がないためほとんどの子が感染症を起こすが、生後12日まで良く頑張ったと。

抗生剤の点滴が追加された。

面会時間より早く病院に呼ばれ元太の顔見たら安心した。本

人は他人事のようにあくびをしながら眠っていた。

点滴でばい菌を除去する事ができなければ、血液を全部入れ替える事になるかもしれないとまた怖い事を言われた。

やっと山を乗り越えたのにまた・・・・

そう、元太にとって一番良い方法ならそうするしかない。


1月29日


【生後13日 母乳6cc×8回 624グラム】肺炎・輸血

肺炎を起こした。輸血をした。体重減っちゃたね。

赤ちゃんとお年寄りの肺炎は命の危険があると聞いた事がある。不安で仕方がないよ。

でもウンチは自分の力で出せるようになったので手術はなくなった。

良かった~。ひと安心だね。

出産した日に産科の先生に言われた言葉を思い出した。

「小さく生まれた子は沢山の山が待っています。ひとつひとつ乗り越えて行くんですよ」

言われたその時は良くわからなかったけど、今やっと実感している。

本当に乗り越えなくてはいけない事が沢山だね。こんな小さな体で沢山の試練を乗り越える事ができるのだろうか。

私の小指の第一間接に5本の指が収まってしまう程小さな元太の手。

精一杯の力を込めて私の指を握っている。

面会時間が終わりに近づき、離そうとしたら、ぎゅーっと強く握る力を感じた。帰りたくない。1分1秒でも一緒にいたい。

でも30分経つと「お母さん、また明日ね。」と看護師さんに言われてしまう。

母親なのに何でずっと一緒に居られないの?


【生後16日 母乳8cc×8回 613グラム】

肺炎になってから5日が過ぎた。少しづつ良くなっていると聞きほっと胸をなでおろす。

スリムな元太君。肺炎が良くなった今また新たなスタートだね。

最近声をかけると目を開いてくれる。お母さんの声がわかるのかな。

妊娠中から歌ってあげていた子守唄を保育器越しに歌ってあげるのが今の私の日課です。


【生後18日 母乳12cc×8回 653グラム】

今日は久々にお父さんに会えたね。嬉しいね。

体重が順調に増えてきている。このまま頑張れ。

黄疸の治療が完全に終わり、目を覆うメガネの為についていたこめかみのマジックテープがとれ、顔がすっきりした。


【生後20日 母乳14cc×8回 705グラム】

点滴が全部取れた!手も足もすっきりした。

いまは人工呼吸器と胸についてる3本のモニターだけ。

順調にミルクも増えてきている。沢山飲んで大きくなってね。


2月8ひ


【生後21日 母乳cc12×8回 】

今日は良く手を動かしてるね。

元気だからミルクをどんどん増やしていったらお腹がぱんぱんになっちゃたからミルクの量を少し減らしたみたい。

このままどんどん増えて欲しいという単純な話じゃないのね。

お腹のキズが痛く体力が戻らない私のために、玲ちゃんが毎日病院まで送り迎えしてくれる。

新生児集中治療室は両親以外は面会できない。

玲ちゃんは毎日私の撮ってくる写真を楽しみにしている。

ビデオに向かって話しかけたり、テレビ越しに元太を触っている姿がおかしくて笑える。

早く会わせてあげたいな。


【生後23日 母乳12cc×8回 715グラム】

初めてしゃっくりをしている姿を見た。こんな普通の姿がすごく嬉しい。

しゃっくりだよ~!しゃっくりだよ~!すごいよね~。

手と足をもじょもじょ動かしてとても活発。呼吸器取らないでね。

ちっちゃい手でしっかり握ってくれているね。

握手


【生後26日 母乳13cc×8回 735グラム】

病院の面会時間。

14:00~14:30・14:30~15:00・15:30~16:00 <一部>

17:30~18:00・18:00~18:30・18:30~19:00  <二部>

それぞれの時間帯の面会人数が決まっている。

空いている時間に予約を入れ、面会をする。

一部の面会が終わった時点で2部の面会の予約が空いていれば予約し、もう一度面会する事が出来る。

病院によって24時間好きな時間に面会できたり、親以外も面会できたりする事をネットで知った。

家にいる時はほとんどネットで情報収集をしている。まわりにはいないけど、ネットでは超低出生体重児のHPを沢山見つけた。

順調に成長している子供達を見る事が今の私の一番の励み。

きっと同じように元気に育つよね。

今までは看護婦さんの手作りの小さなオムツをしていたけど、最近うんちが漏れるからメリーズの新生児用のオムツをさらに折って使う事になった。
早くオムツ替えしてみたいな~。


おむつ

【生後27日 母乳13cc×8回 770グラム】29週3日

酸素の量の調節が微妙らしく、体の酸素の量を量る機械がピーピー鳴り響く。

酸素の量を多くすると体に酸素がありすぎてだめだし、少なくすると呼吸が苦しくて音がなる。

高濃度の酸素を与えると未熟児網膜症が発症する確立が高くなるため、なるべく酸素を使って欲しくない。

でも今は目よりも呼吸を確保する方が優先。

目も、命も両方助かって欲しい。


【生後30日 母乳14cc×8回 800グラム】1回目眼底検査→異常なし

出生体重にほぼ戻ったね!一ヶ月かかって落ちた体重を取り戻す事が出来ました。

「また新たなスタートだね。頑張ろうね」とおひげ先生から。

酸素濃度は21%。機械の一番最低なラインだ。殆ど機械の酸素を頼らないで呼吸はできているとの事。

本当はもっと前に呼吸器を抜くはずだったが、今日から眼底検査が始まるため呼吸器を抜くチャンスを見送った。

眼底検査は週1回。NICUに眼科の先生が来て下さり、部屋を暗くして眼底の検査をする。もちろん親は外に出される。

眼底検査の時は大泣きするため呼吸が乱れてしまうので、呼吸器をつけたり外したりするのも苦しいからそのままつけていた方が本人にとっては一番楽との事。

目が落ち着いたら呼吸器を抜くという事になった。複雑な気持ちだ。

酸素を長く使っていれば網膜症を発症する。でも呼吸器をつけていなければ検査に耐える事はできない。

今一番大切な事は呼吸をする事だもんね。

眼底検査の後面会した。泣きはらした後、目を機械で開く為縦に赤い線が残っている。目は腫れていて顔を見るのが辛かった。

痛かったね。良く頑張ったね。私の顔を見た途端元太はまた泣き出した。

僕頑張ったんだよ~。と言わんばかりに。

                             




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